

伝統と革新が交差する京都の舞台に、多くの視線が集まった。6月13日、「第32回 ファッションカンタータ from KYOTO」が京都劇場で開催された。今年のテーマは「DESIRE―欲望―」。和装と洋装、伝統と革新が交差する舞台には多くの観客が集まり、俳優・アーティストののんと、世界的な人気を誇るダンスグループ・アバンギャルディが会場を熱狂の渦に包み込んだ。
京都が誇る和装文化と現代ファッション、さらに舞台芸術が融合する同イベント。今年もまた、ここでしか見ることのできない特別なステージが繰り広げられた。
アバンギャルディが圧巻のシンクロダンスで幕開けを飾る

会場の空気を一変させたのは、オープニングに登場したアバンギャルディだった。
重厚な音楽が流れる中、Y’sの洋装をまとったメンバーたちが静かに姿を現す。整然と並んだフォーメーションは、楽曲に合わせて次々と変化。一糸乱れぬシンクロダンスによって生み出される独特の世界観に、観客の視線は瞬く間にステージへと引き寄せられた。

首の角度、腕の振り、歩幅まで揃えられた動きは圧巻の一言。まるで一つの巨大な生き物が呼吸しているかのような一体感があり、会場には驚きと興奮が広がった。

Y’sのシャープなシルエットも、アバンギャルディの躍動感によって新たな表情を見せる。ジャケットの裾からのぞくキュプラ素材が照明を受けて揺れ動き、グレーの繊細な色彩がダンスとともに浮かび上がった。ファッションとパフォーマンスが完全に融合した瞬間だった。
のんが洋装と和装で見せた二つの美しさ


この日のもう一人の主役が、俳優・アーティストとして活躍する、のんだ。
まずY’sのステージでは、白いセーラーカラーのシャツにワイドスラックスを合わせたジェンダーレスなスタイルで登場。余計な装飾を削ぎ落としたシンプルな装いながら、その存在感は際立っていた。
ゆったりとしたシルエットが生み出す自然なドレープと、軽やかな足取り。静かな強さと透明感を兼ね備えたのんの姿は、Y’sが持つ自由で力強い世界観と見事に重なり合った。
そして会場を沸かせたのが、丹下雄介による和装ステージだ。
ユリの花を描いた特別な着物で観客を魅了

のんが身にまとったのは、自身が好きだというユリの花をモチーフに制作された特別な着物だった。
鮮やかな赤を基調とした蝋けつ染めの作品は、舞台美術の色彩とも呼応しながら強烈な存在感を放つ。さらに着物と帯には「のん」の名前があしらわれ、この日のためだけに仕立てられた特別な一着となった。
ランウェイに現れた瞬間、客席からは思わず感嘆の声が漏れる。洋装で見せた軽やかな魅力とは対照的に、和装では華やかさと力強さを兼ね備えた存在感を放った。
歩みを進めるたびに表情を変える着物の柄、照明に映える鮮烈な赤、そして堂々とした立ち姿。伝統技法による美しさと現代的な感性が融合した姿は、まさにファッションカンタータが掲げる「和と洋の共演」を象徴していた。
6人の和装作家とY’sが描いた「DESIRE―欲望―」
今回のステージでは、中野幸一、河野雅之、西山恵子、寺本幸司、毛利泰巳、丹下雄介の6人の和装作家による25点の和装作品と、Y’sによる20点の洋装作品が披露された。
それぞれが異なる価値観や美意識を表現しながらも、「DESIRE―欲望―」というテーマのもとで一つの物語を紡いでいく。京都だからこそ実現できる文化的な厚みと創造性が舞台全体を包み込んでいた。
浴衣姿のアバンギャルディが示した和装の新たな可能性

フィナーレでは、アバンギャルディが浴衣姿で再び登場した。
トレードマークである制服姿とは異なる和装スタイルは新鮮な驚きを与え、おかっぱ頭と浴衣という組み合わせが独特の存在感を放つ。
伝統的な和装に現代的なパフォーマンスを掛け合わせることで、日本文化の新たな魅力を提示したアバンギャルディ。その姿は、ファッションカンタータが目指す「伝統と革新の融合」を象徴するラストシーンとなった。
京都から発信される和装文化の未来
ファッションカンタータ from KYOTOは、京都が誇る和装文化と先進的な洋装文化、そして芸術文化の交流と融合を目的に続けられてきた。
第32回を迎えた今年も、のんとアバンギャルディという現代を象徴する表現者たちが、その理念を鮮やかに体現した。伝統を守るだけではなく、新たな価値へと昇華させる――京都から発信されるファッションの可能性を鮮やかに映し出す舞台となった。

💎取材・文:洪 玉英 📸写真:安藤洋晴/安座間優
