2026年9月19日、横浜アリーナで開催された『第43回 マイナビ 東京ガールズコレクション 2026 AUTUMN/WINTER』(以「TGC」)。そのファーストステージのTGC SPECIAL COLLECTIONでひときわ強い存在感を放ったのが、“黒”を基調としたスタイリングだった。
スタイリングを手掛けたのは、スタイリスト・野口強氏。SMAPのメンバーとして「キムタク」の愛称で親しまれた木村拓哉氏をはじめ、数々の著名人のスタイリングを手掛け、日本のメンズファッションシーンを長年牽引してきたスタイリストです。
レザージャケット、ウォレットチェーン、ミニドレス――。小川桜花、岩瀬夕由、せいら、ゆうちゃみ、鎮西寿々歌らが纏ったのは、漆黒を基調としたシャープでエッジィなスタイリングだ。
「カワイイ」が強い存在感を放つ日本のファッションシーンに、モードで都会的な新しい空気が吹き込まれた。
「NEW GRAVITY」と響き合う、野口強の“黒”
今回のTGCのテーマは「NEW GRAVITY」。既成概念にとらわれず、次世代をリードする新たなファッションとカルチャーを創出し、世界を惹きつける新たな中心地=“引力”となる意志が込められている。
そのステージで野口氏が提示したのは、レザージャケットやウォレットチェーンなどを取り入れた、都会的で洗練されたロック・モードの美学だった。
メンズファッションを長年手掛けてきた野口氏ならではのシャープなエッセンスをウィメンズスタイルへ落とし込みながら、モデルそれぞれの個性を引き出していく。
黒という一見シンプルな色をキャンバスにすることで、シルエット、素材の質感、アクセサリー、そしてモデル自身が持つ存在感が際立つ。
アイドル、俳優、タレント、モデル――。現代のファッションとカルチャーを彩るアイコンたちが、野口氏の描く“黒”の世界へと溶け込んでいった。
ここからは、ランウェイでひときわ印象的だった5つのルックを紐解く。
5人のモデルが纏った、野口強のウィメンズスタイル
鎮西寿々歌(FRUITS ZIPPER)――愛らしさを塗り替える、漆黒のレザー

激しく鳴り響くドラムの生演奏の中、ファーストバッターとして登場したのは、FRUITS ZIPPERの鎮西寿々歌。
ミニワンピースにコンパクトな丈感のレザージャケットを羽織り、クールな眼差しで静かにランウェイの中心へと歩を進めた。
首元には無骨なウォレットチェーン。光沢を帯びた黒のレザーが、彼女の透明感のある肌や端正な顔立ちをシャープに引き立てる。
普段の愛らしいアイドルイメージとは異なる、凛とした女性像。黒という色が、鎮西寿々歌の新たな表情を引き出していた。
岩瀬夕由――ミニマリズムに宿る、繊細な少女像

沖縄出身の新鋭モデル・岩瀬夕由は、膝上丈のふんわりとしたシルエットのワンピースで登場。
首元には丸い金属パーツが施されたレザーベルトを配し、手首にも同素材のブレスレットを添えた。
一見するとミニマルで素朴なアプローチ。しかし、余白を残したスタイリングだからこそ、彼女自身の透明感と繊細さが際立つ。
装飾を重ねるのではなく、必要な要素だけを残す。ミニマリズムの中に静かなストーリー性を感じさせるルックだった。
小川桜花Girls 2――レザーが引き出す、強さとセクシーさ

Girls 2(ガールズガールズ)のメンバーでアーティスト、女優、ダンサーと多彩な顔を持つ小川桜花。
深めのVネックがセンシュアルな雰囲気を醸し出すミニドレスに、スターモチーフとホワイトのライン、フロントボタンが効いたレザージャケットをオン。
胸元にはネックレス。170cmのプロポーションを生かし、足元にはレースのソックスを効かせたシューズをセットした。
レザーのハードな質感に、ネックレスの繊細な輝きが重なる。そのコントラストが、強さと女性らしさを同時に引き立てた。
歩を進めるたびに、大胆でセクシーなアティチュードがランウェイに広がった。
ゆうちゃみ――マットブラックで魅せる、都会のエレガンス

前上がりのヘムラインから大胆に伸びる脚線美が目を引くアシンメトリードレスを纏ったのは、人気モデル・ゆうちゃみ。
首元のウォレットチェーンと足元のロングブーツが、全身を包むマットなブラックの質感を引き締める。
光沢を抑えた黒だからこそ、ドレスのシルエットと長い脚のラインが際立つ。
そのまま夜のパーティーへと繰り出すような、都会的で洒脱な女性像。華やかさを過剰に足すのではなく、黒の質感と身体のラインで魅せるスタイリングが印象的だった。
せいら――星を纏った、黒のフィナーレ

フィナーレを飾ったのは、モデルのせいら。
輝く星の刺繍が散りばめられたミニワンピースにショートジャケットを羽織り、すらりと伸びる脚にはロングブーツをコーディネート。
一歩踏み出すごとに星の刺繍が煌めきを放ちながらも、甘さに寄りすぎない強さを保っている。
黒という色の力によって、都会的で芯のある女性像が完成した。
暗闇の中を一筋の光が走るように、せいらのルックはランウェイに強い余韻を残した。
Editor’s Note|黒が生み出した、もう一つの引力

黒は、自らの色を主張しない。
だからこそ、服の仕立て、シルエット、身体のライン、素材が持つ質感、そしてモデルの表情が鮮明に浮かび上がる。
華やかなものを、さらに足し算で華やかにするのではない。
今回の野口強氏のスタイリングには、過剰な装飾を削ぎ落とし、必要なものだけを残す「引き算の美学」が感じられた。
レザーの無骨さ、ダイヤモンドの輝き、ウォレットチェーンの存在感、そして黒という色。
異なる個性を持つ5人のモデルがそれぞれの魅力を放ちながら、一つの世界観へと結びついていく。
「NEW GRAVITY」というテーマのもと、野口氏がTGCのステージに描いたのは、単なる“黒いスタイリング”ではない。
それは、既存のイメージに寄り添うのではなく、黒を軸に新たな視線を引き寄せる、一つのファッションの力だった。
漆黒のランウェイに生まれた、もう一つの「引力」。
💎取材・文:洪 玉英 📸写真:安座間 優

