Ao Miyasaka、社会の痛みを可視化した衝撃のファッションショー

Ao Miyasaka、社会の痛みを可視化した衝撃のファッションショー

Rakuten Fashion Week Tokyo 2026 A/W |Global Fashion Collective

Global Fashion Collective(GFC)のランウェイが「Rakuten Fashion Week TOKYO 2026A/W」会期中の3月17日、東京都渋谷区の渋谷ヒカリエで開催され、日本人デザイナーAo Miyasakaがコレクションを発表した。



■ 社会の痛みをまとうコレクション

浮世絵や般若、和彫り、刺繍——日本の伝統的モチーフを取り入れながら、Ao Miyasakaが描き出したのは、現代社会に潜む“見えない痛み”だった。

虐待、家庭内で連鎖する貧困、性犯罪。華やかなルックの背後には、重く切実なテーマが織り込まれている。

コレクションは赤・黒・白の3色で構成。
赤は身体と情熱、黒は痛みと怒り、白は再生を象徴し、視覚的な美しさと強いメッセージ性が緊張感をもって共存していた。


■ “生命の安全教育”へと接続する視点

本コレクションの核にあるのは、「見て見ぬふりをしない社会」への問いだ。

虐待や性犯罪といった問題は、現代日本における“生命の安全教育”とも深く関わっている。Ao Miyasakaは「皮膚の記憶」という概念を通じて、身体に刻まれるトラウマや記憶を衣服として可視化した。

見えない傷をあえて浮かび上がらせることで、社会の無関心を揺さぶる。その姿勢は、ファッションの枠を超えたメッセージとして機能していた。


■ ランウェイに響いた“現実の声”

ショー演出もまた印象的だった。

開幕と同時に流れた「警備を解除してください」という音声。終盤には、警察とのやり取りを想起させるリアルな音が会場を満たす。

静寂のランウェイに突如差し込まれる“現実の声”。それは演出を超え、観客に緊張と違和感をもたらした。

その違和感こそが、「現実から目を逸らさない」という強いメッセージとして機能していた。


■ Ao Miyasaka「もう“見て見ぬふり”ができる時代は終わった」

「もう“見て見ぬふり”ができる時代は終わった」

ショー終了後のデザイナー個別会見で、Ao Miyasakaは今回のコレクションについてそう言い切った。

ニューヨークでの発表を経て、日本だからこそ伝えたい問題意識を形にしたという。華やかなファッションの舞台を通して、社会の中で見過ごされてきた現実を可視化する——それが今回のコレクションの核だった。

象徴的だったのは、「皮膚の記憶」という概念だ。
虐待や貧困、性被害によって身体に刻まれる、目には見えない傷。それらを衣服の構造として表出させることで、「見て見ぬふりできない現実」を観客に突きつけた。

さらに、コレクションを構成する赤・黒・白の3色にも明確な意味が込められている。
赤は身体と情熱、黒は痛みと怒り、白はその奥にある再生の可能性。

中でも印象的だったのが、ドレスに施された無数の丸い穴のディテールだ。日本製ビーズによる精緻な装飾でありながら、それはデザイナー自身が経験した性被害の記憶を数として刻んだものでもあった。

美として提示される装飾の中に、個人的な痛みが埋め込まれている。
その表現は極めてパーソナルでありながら、同時に社会全体へと向けられた問いでもある。

■ フィナーレに流れた“春”の違和感

ショーフィナーレに静かに流れ始めたのは、『花』。
春を想起させるこの旋律は、一見すると季節感の演出にも思える。

しかし、Rakuten Fashion Week Tokyo 2026 A/W の舞台において、それは“時間のズレ”を際立たせる装置として機能していた。

春に開催される秋冬コレクション。そこにさらに“春の記憶”が重なることで、現在・未来・過去という複数の時間が交錯する。だが、それらは美しく重なるのではなく、わずかなズレを残したまま並置される。

本来、「花」は満開の美を称える楽曲として知られる。だがこのショーで響いていたのは、むしろ散りゆく気配を孕んだ美だった。

完成された輝きではなく、すでに崩れ始めている状態——その曖昧な境界が、静かに浮かび上がる。


■ 「刺繍グラフィティ」と時間の重なり

この構造は、Ao Miyasakaの代表的手法「刺繍グラフィティ」とも通じる。

瞬間的な衝動としてのグラフィティと、時間をかけて積み重ねられる刺繍。相反する時間が共存するように、ランウェイという一回性の出来事と、記憶として繰り返される音楽が重なり合う。

消えていくものと残り続けるもの。その緊張関係が、作品全体に一貫した深みを与えていた。


■ Global Fashion Collectiveとは

Global Fashion Collectiveは2017年に設立された国際的ランウェイプラットフォームで、新鋭デザイナーの発掘と育成を目的としている。

ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、パリ、東京など世界各地でショーを展開し、次世代デザイナーの国際的発信を支援している。

今回のランウェイにはAo Miyasakaのほか、Marika Suzuki、Eduardo Ramosが参加。それぞれが異なる視点から現代を表現した。


■ ファッションは社会と対話するメディアへ

Ao Miyasakaは現代アーティストとしての背景を持ち、社会問題への視点を一貫して作品に反映してきた。

ファッションという手法を選んだ理由は、「身体そのものをメディアとして扱うため」。

衣服は単なる装飾ではなく、記憶や感情を宿す装置となる。
美しさの中に痛みを内包し、沈黙の中に抗議を刻む——その表現は、ファッションの新たな可能性を提示していた。


■ まとめ

華やかなランウェイの裏側で提示されたのは、「見て見ぬふりできない現実」だった。

Ao Miyasakaのコレクションは、ファッションが単なる衣服ではなく、社会と対話する力を持つメディアであることを鮮烈に示した。

💎取材・文:洪 玉英 📸写真:安座間 優

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