ATTACHMENT 2025-26AW|東京発“REVIEW”で読み解く内面とミニマリズムの再構築

FASHION

💎文:洪 玉英     💎カメラ:安座間 優

デザイナー・榎本光希が手がけるATTACHMENT(アタッチメント)は、2025年2月7日、東京・品川区の寺田倉庫「E HALL」にて、2025-26年秋冬コレクションを発表した。2022-23年秋冬以来となる、3年ぶりの単独ショーである。

創業者・熊谷和幸氏からブランドを引き継ぎ、7シーズン目に突入した今、榎本はブランドの本質をいま一度見つめ直すべく、**“REVIEW(再構築)”**というテーマを掲げた。だがそれは単なる過去の回顧やリバイバルではない。
むしろ、「衣服を通じて自己の内面を問い直す行為」として、装うという行為の根源的な意味を更新する試みに他ならない。

本コレクションでは、ATTACHMENTが創業時から掲げる、「服は着る人の個性や魅力、内面を引き立てる付属品である」という思想を、より私的で親密な領域へと接続している。


フォーマルとカジュアルの境界線を横断しつつ、アンダーウェアやルームウェアといった**“身体に最も近い衣服”を意識的にスタイリングの表層へと浮かび上がらせる**構成は、服と身体、そして内面との関係を新たな視座から捉え直そうとする姿勢を物語る。

また、スタイリングの演出にも注目すべき点が多い。視覚的な装飾性ではなく、素材やレイヤリング、動きによって生まれる陰影や揺らぎといった繊細なニュアンスに焦点を当てた構成は、まさに“着ることで完成する”のではなく、“着ることで問いが始まる”衣服であるという、今季のATTACHMENTの思想を象徴している。

“REVIEW”とはすなわち、内面の再構築のプロセスである。服は見せびらかすための記号ではなく、自己を内側から編み直すための静かな装置。ミニマルなシルエットと構築的なラインの中に、現代のファッションが取り戻すべき哲学が宿っている。

ATTACHMENTが掲げる“REVIEW”とは、単なる懐古でも回顧でもない。
それは、自身の感情や時間、生活のかたちを丁寧に組み直す行為だ。
「誰かに見せるため」ではなく、「自分の内面と再構築する」ための服づくり。

今季は、日常と非日常のあわいにある“私的な時間”や、感情の“揺らぎ”といった、目に見えないものを繊細に表現している。

コレクション全体に通底するのは、無駄を削ぎ落としたミニマルな構造美
大胆な装飾ではなく、フォルムや生地そのものが語る静けさこそが、内面の表現である。

たとえば、オープニングに登場したブラックのスーツは、軽量でしなやかな素材感と背筋の伸びたラインが特徴的。
そこには、「過去の荷物を手放し、未来へ向かう意志」がにじむ。
まるで、自分の感情を再構築するための服のようだ。

H2-4|偶発性をデザインする──レイヤードと素材の“再構成”

今季の特徴のひとつが、意図的でないように見せかけた偶発性の演出
風に揺れるコートの裾、重ねたシャツの隙間からのぞく色彩、異なる質感の交差。

これらはすべて、内面の揺れや即興性を服という構造に組み込んだ結果だ。
使用された素材は、ウール、コットン、リヨセル、スエードなど。
中でも、光を吸収するようなマットな質感が、感情の深部を映し出している。

H2-5|“日常を再構築する服”としてのルームウェア的スタイリング

今季は、ワイドパンツやボタンレスのトップス、アンダーウェア風のレザーアイテムなど、ルームウェア的な要素が随所に取り入れられた。

カラーパレットは、ブラック、ネイビー、チャコールグレー、ダークブラウン、キャメル、エクリュといった落ち着きのある色調に、淡いペールグリーンがアクセント。
心の奥に“安らぎ”をもたらすような、静謐な美が広がる。

このスタイリングは、生活と感情の境界を柔らかく溶かし、日常そのものを再構築するための服として成立している。

H2-6|“服=心のプロテーゼ”というファッションの再定義

ATTACHMENT 2025-26AWが示したのは、服が「心のインターフェース」になり得るという可能性だ。
着ることで社会に同調するのではなく、自分自身を守り、再構築するための装置として服を捉える視点。

それは、トレンドの表層ではなく、感情の奥行きに寄り添うファッション哲学そのものである。

【まとめ】“REVIEW”というテーマが語る、ファッションと自己再構築の関係

“REVIEW(再構築)”というテーマは、単なるデザインの方向性ではなく、服を通じて私たち一人ひとりが自分と対話し直すための静かな呼びかけでした。

このコレクションは、外に向けた派手さよりも、内面と寄り添い続ける服の力をそっと提示しています。

SNS的な速さや映えとは異なる、“長く効く服”──。
ATTACHMENTの服は、そんな時代に必要な、新しいミニマリズムのかたちを提案しているのかもしれません。

💎文:洪 玉英     💎カメラ:安座間 優

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