ケイスケ ヨシダ([KEISUKEYOSHIDA])は2025年7月24日、東京都港区六本木の「ESTNATION 六本木ヒルズ」にて2026年春夏コレクションを発表。
ブランド設立から10周年を迎えた今シーズン、デザイナー・吉田圭佑は「Refresh and Relaxation(リフレッシュとリラクゼーション)」をテーマに掲げ、現代女性の“解放された大和撫子”の姿を衣服で表現した。
自由を纏う──ベルトやディテールが描く新しいシルエット
最初のルックでは、ネックラインに移設されたパンツのウエストベルトや外されたボタンが目を引く。
解かれたディテールが、従来の型にはまったフォルムを崩し、都市に生きる女性の自由な精神を象徴している。
内面の強さを映す──折られた袖口と膨らんだ襟元
意図的に折られた袖口、膨らんだ襟元が、現代女性が抱える疲れや葛藤を映し出す。
首元に再配置されたベルトは、男性社会という鳥籠から解き放たれたカナリアのように、自由を希求する女性像を象徴する。
夢幻的な表現──溶ける輪郭と曖昧な現実
ブルーのルックでは、立体的なヘッドピースと流れるシルエットが、サルバドール・ダリの《記憶の固執》を彷彿とさせる。
衣服の輪郭が溶けるように曖昧で、硬さと柔らかさが交錯する。大和撫子の内面と外見の美しさが、現代においても芯のある精神力として可視化されている。
大きなハートと匿名性——“記号”としての顔
今回のコレクションでひときわ異彩を放っていたのが、日本の伝統的な「笠」から着想を得た新作アイテムだった。
ケイスケヨシダはブランド創設以来、全ルックに「メガネ」を取り入れてきた。それは内向的な心の象徴であり、顔をわずかに隠すことで生まれる匿名性を演出する手段でもあった。
大きなハートと匿名性——“記号”としての顔
そして今季、新たに加わった「笠」は、匿名的な“記号”としての役割をさらに強調する。
社会が徐々にジョージ・オーウェルの『1984』的な管理社会に近づく中で、視線をかわし、自分の輪郭を守るための“匿名性”は強い意味を持ち始めている。
それは同時に、個を抑圧するのではなく、自分を守るための「大きなハート」の象徴でもあった。
10周年が描く未来──“解放された大和撫子”の進化形
10年という節目を迎えたケイスケヨシダ([KEISUKEYOSHIDA])は、過去の歩みを振り返るだけでなく、未来を描き出す。
「Refresh and Relaxation」というキーワードは、社会の緊張感を和らげ、女性がより自然体で生きられる姿をファッションで表現する試みである。
それは“解放された大和撫子”の進化形であり、ブランドがこれからも問い続けるテーマである。







































































💎 文:森野 コウ 📸 写真:安座間 優