【HUMMEL 00 2025-26年秋冬】北欧発・共生をテーマにしたファッションショーを徹底解説

FASHION

💎文:洪 玉英     💎カメラ:安座間 優

デンマーク発のスポーツブランド「HUMMEL(ヒュンメル)」は、1923年に誕生した老舗ブランド。2025-26年秋冬コレクションで登場した「HUMMEL 00(ヒュンメルオー)は、100年の歩みを土台にしながら、“再出発”と“無限の可能性”を意味する「00(ゼロゼロ)」を冠している。

ブランド名の由来である「マルハナバチ(ドイツ語でHUMMEL)」には、「本来飛べないはずの体で、努力と構造によって空を飛ぶ」という象徴的なストーリーがあり、“不可能を可能にする”という哲学が根底にある。

2025年3月18日(火)午後6時すぎ、東京都渋谷区代々木・国立競技場園の屋外スペースにて発表された今季のテーマは「NEW HERITAGE(新しい継承)」。

北欧に根づく「共生」や「ノーマライゼーション(障がいや年齢の違いを問わず、誰もが自然に生きられる社会)」といった価値観を軸に、ヒュンメルのスポーツDNAと融合。世代を超えて着られる、意味のある服が提案された。

ショーが始まるやいなや
空はそっと まつげを濡らすように
やわらかな雨粒を落とした

それはまるで、
舞台に降り立つ前の祈りのようで
ざわめきを静かに鎮めてゆく

少雨は時を刻むように、
モデルたちの足音に寄り添い
コレクションの輪郭を
しっとりと描いていった

そしてフィナーレ
すべてが結ばれるその瞬間、
雨は少しだけ深くなり
小雨へと姿を変えた

まるで空さえも、
この“共生のデザイン”に
ひとしずくの敬意を捧げたかのように

会場の雰囲気は、まるで古いヨーロッパの石畳を歩いているかのような静けさ。月の光を彷彿とさせる柔らかなライトが、モデルたちの歩みを美しく照らす。

黒のジャケット×ハーフパンツのシンプルなルックが、第一歩から観客の目を引きつけ、シルエットの中に宿る思想を静かに語りかける。

男女問わず、年齢も体型も超える。今季のコレクションはまさに「誰もが着られる」ことを想定した、機能性と美意識が同居したデザイン。

サッカーソックスのようなV字ライン、軽量スウェット、タイトなフォルムが共鳴し、身体の自由を尊重する美しさが際立った。

ヒュンメルの象徴である「シェブロン(V字)パターン」は、今季のキールックに多数登場。

トラックスーツからドレス、ニット、アウターに至るまで、V字の力強さは服に「信頼と進化」の意味を与え、視覚的アイデンティティとして定着していた。

体にフィットするマイクロゲームシャツに、鮮やかなカラータイツとタートルネックをレイヤード。

インナーウェアのようでありながら、全体の調和で“動作”そのものが美へと昇華する。

オーバーサイズのジャケットにさりげなく織り込まれたV字模様。

すべての人が纏(まと)える“中性的デザイン”としての説得力を持ち、北欧らしい知性を感じさせた。

黒×グレーのワントーン構成に、撥水・防寒・通気性を兼ね備えた機能素材が融合。

実用性と美が両立した、まさに“着る共生”を体現する1着だった。

(哲学的まとめ)

ヒュンメルオーのコレクションは、ただのファッションショーではない。それは、人と人との「差異」ではなく、「共にある」ことの美しさを、静かに、しかし明確に伝えるデザインの連なりだった。

見た目の華やかさ以上に、“誰かと一緒にいることの温かさ”を想像させる服たち。それこそが、北欧が100年かけて育ててきた価値観だ。

HUMMEL 00は、「スポーツ」「北欧デザイン」「共生社会」を縦糸と横糸にし、衣服というメディアで新たな社会のかたちを描いている。

トレンドや流行を超えて、世代を超えて着られるこのブランドの進化は、ファッションが“社会をつなぐ装置”であることを再認識させてくれるだろう。

光が空から舞い降りる
まるで星たちが
この夜に寄り添うように

雨は声をひそめて降り
ひと粒ずつ 時を刻み
モデルたちの背を 静かに包む

濡れた石畳が
銀に光り
足音は まるで祈りのよう

観客はその光景に息をのみ
スマートフォン越しでは捉えきれない
“静謐な奇跡”が そこにあった

これはただのショーではない
空と地上が一瞬だけ重なりあった、
ある夜の共生の記憶

💎文:洪 玉英     💎カメラ:安座間 優

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