ジギーが京都に舞い降りた──。
6月14日(土)、和と洋の美を融合させるファッションイベント『第31回 FASHION CANTATA from KYOTO』が京都市下京区にある、京都劇場で開催された。今回のテーマは「情熱のベクトル」。
日本と西洋の感性が交差する舞台に、異界から舞い降りたかのように現れたのが、ダンサーでありアーティスト、アオイヤマダだった。
彼女が身にまとっていたのは、デヴィッド・ボウイが1973年のUSツアーで着用した、故・山本寛斎よる伝説の衣装「TOKYO POP」。

黒と銀の稲妻が走るそのデザインは、ジギー・スターダスト――地上に降り立った架空のロックスター――の象徴として、半世紀を経た今もなお圧倒的な存在感を放っている。

シシド・カフカ、そしてSOIL & “PIMP” SESSIONSの生演奏がうねる中、アオイヤマダは異星からの訪問者のように、静かにステージに姿を現した黒光りするコート、無機質な表情。身体の動きはゆるやかでありながら、どこか切迫した緊張感を孕んでいた。観客の意識は一瞬で“異世界”へと連れ去られる。
やがて彼女は、ゆっくりとコートを脱ぎ捨てた。

現れたのは、刺青を思わせる模様に覆われたボディスーツ姿。
その瞬間、空気が変わる。
美と狂気、官能と不穏。
対極の感情がせめぎ合い、得体の知れない不安定さとなって観る者の心を揺さぶった。
「死ぬほど殴ってくれてもかまわない」――。
そんな言葉が、どこからともなく響くような、自己破壊と変容の舞。
アオイヤマダは、ただ踊ったのではない。

彼女は、ジギー・スターダストの魂をこの時代に呼び戻し、“変われ”という衝動を、観客に叩きつけのだ。
‘‘変化せよ。大人になっても、なお変化し続けよ。‘‘
そのメッセージは、叫ぶでもなく、語るでもなく、ただ身体によって発せられた。

未来を見失いかけたこの時代に、アオイヤマダの身体表現は、静かで鋭い警鐘となって、観る者の胸に深く響いた。

💎取材・文:洪 玉英 💎カメラ:安藤洋晴 ・安座間 優