異文化が織りなす“優美な抵抗”──2人のヒロインが描いた新時代の美学
福岡県北九州市小倉北区にある、西日本総合展示場新館で10月11日(土)に開催された『TGC KITAKYUSHU 2025 by TOKYO GIRLS COLLECTION』(以下、TGC)。
今年も「TGC地方創生プロジェクト」の一環として行われたこのイベントは、地元とファッションをつなぐ架け橋として多くの注目を集めた。TGCの地方創生プロジェクトという枠組みは、北九州では2015年が最初。地方開催では最多9回目。「TGC北九州2025」のテーマは「Flourish」。咲き誇る花のように、自分らしく、美しく。
北九州市が目指す、女性一人ひとりが自分らしく輝き、さまざまな分野で活躍できる社会の実現と、福岡県が取り組む「花による美しいまちづくり」をイメージし、まちに根付いた多様な命と可能性が互いに響かせ合いながらともに成長し、未来に向けて花開く ——。
ステージの幕開けを飾ったのは、人気スタイリスト髙橋美咲氏が手掛けるファッションショー。
その舞台に登場したのは、齋藤飛鳥と土方エミリ──異なる文化を背景に持つ二人のヒロインが、圧倒的な存在感で観客を魅了した。
乃木坂46卒業後、初めてTGCのトップバッターとして登場した齋藤飛鳥は、日本人の父とミャンマー人の母を持つ。
純白のシャツにパールメタリックのドレスをまとい、凛とした佇まいの中に独立した精神性を感じさせた。
清楚でありながらも、自らの意志で立つ女性像──まさに“優美な抵抗”を体現していた。

続いてステージに現れた土方エミリは、日本人の母とドイツ人の父を持つ。
黒いレースドレスにレザージャケットを重ね、強さと繊細さを同時に表現。
その表情には、どんな時も自分らしさを貫く芯の強さが滲んでいた。
異国の風を感じさせる彼女の存在は、まるで伝統と革新が融合する瞬間を象徴。

テーマは“アン ロマンティック”──従順ではなく、主体的に生きる美
今回のテーマ「アン ロマンティック(Un Romantic)」には、
「伝統を知り、あえて裏切ることで生まれる美の革新」というメッセージが込められている。
髙橋美咲氏はこのテーマを通じて、「上品でありながら、従順ではいられない」女性像を描き出した。
その根底には、哲学者シモーヌ・ド・ボーヴォワールの著書『第二の性』の思想が息づく。
女性が“他者”としての役割を拒み、自らの美学と意志で生きる──
そんな“主体的な私”を象徴する存在として、齋藤飛鳥と土方エミリはこのステージに立った。
伝統を裏切ることは、決して否定ではなく、新しい美を生み出す挑戦。
その“アンロマンティック”な精神こそ、今の時代を生きる女性たちへのエールであり、
TGC 北九州 2025が放った最大のメッセージでもある。
💎 取材・文:洪 玉英 📸 写真:安座間 優